ゆえん



事故の日から二回目の九月十七日に、冬真はバースディケーキとシャンペンと花束、そしてウサギのぬいぐるみを持って、二人のお墓に行った。

沙世子と真湖は、誕生日が一緒だ。

去年は切なくて、とても祝ってやれなかったが、今年はちゃんと二人の前で祝ってやろう、と一周忌を終えた後から心に決めていた。

絶対に二人のことを思い出だけになんかしたくはない。

墓石の前にケーキを置き、小さいろうそくを三本立てた。


「沙世子のローソクは数が多いから、立てなくてもいいよな」


墓石に沙世子の小さく舌を出した微笑みが映ったかのように見えた。

冬真は小さなウサギのぬいぐるみを墓石に寄り添わせる。


「三歳なら、ぬいぐるみ以外の物が欲しいのかもな……。でも何がいいのか、パパだけじゃわかんないよ」


墓石に語りかけながら、涙が溢れてきた。

深呼吸をして空を見上げ、大きく息をつき、シャンペンの栓を開け、墓石の上に少しずつ流し、そして残りは自分で飲んだ。


「お誕生日おめでとう」


冬真は墓石の横に腰を落とし、寄り添うように体を預け、目を閉じた。


どれくらい時間が経ったのか、冬真はその場で眠っていた。とても幸せな夢を見ていた。

沙世子が手作りのバースディケーキを冬真に差し出し、その横で少し大きくなったように見える真湖がにこにことしていた。


『今日があなたの新しい誕生日よ。おめでとう。冬真』

『パパ、おめでとう』


とても明るくて清々しい笑顔をした二人がそこにいた。