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無言のまま、帰路のドライブは終わる。

理紗が『You‐en』まででいいと言うので、真っ直ぐ『You‐en』に向かった。

午後九時を回っていた。

店の前で車を止めると、理紗は静かに話し出した。


「その人が亡くなったこと、翌日の新聞で知ったの。岸田冬真という名前も新聞で知った。二人も亡くなっていることを知って怖くなった。だから逃げるように東京に行ったの。その日のうちに。あれは現実じゃないって、悪夢だったんだって思うことにしたの」

「……どうして……」


どうして俺の目の前に現れたんだと、言いたかった。

沙世子と同じ顔をして、沙世子の命を奪ったなんて、なぜ告白するのだ。

沙世子と同じ顔の理紗に微笑んで欲しいと確かに思った。

何も知らず、そう思った自分を恨めしく思った。


「結局、修ちゃんと菜穂さんが一緒に出て行ったことは、店長さんに一番の不幸を生んだことになるのかもしれない」

「……降りてくれないか」


冬真の声に余裕がないことを理紗は感じていた。


「……私のこと絶対に赦せないって、そういうことなの」


それ以上は何も言わず、理紗は車を降りると深く頭を下げ、助手席のドアを閉めた。

冬真は両手で額を覆い、しばらく動けないでいた。