「……世の中にはそっくりな人間が三人いるとかって言うよね。私そのうちの一人と出会ったことがある」
理紗が何を言おうとしているのか分からない。
ただ、そっくりな人間という言葉で沙世子のことが浮かんだ。
「同じ顔同士の他人が出会うと……、どちらかがいなくなることになる。そんな話聞いたことない? ずっと作り話だと思っていたけれど、本当だったなんて」
「……何が言いたいの」
「四年前の雨の日、私見たの。自分にそっくりな人。きっと本当は私が居なくなるはずだった。向こう側……道路の……車に乗り込んだ修ちゃんらしき人を見て、追いかけて飛び出そうと……。だから、私がその人の車にはねられるはずだった。でも……、その人、急ブレーキを踏んだの。私はその音で足を止めた。瞬間、目の前から車が消えて……たの」
高速道路上で冬真は思わずブレーキを踏んだ。
後方の車から激しいクラクションが鳴らされ、我に返った。
ハザードを出し、路肩に車をよせるのが精一杯だった。

