電車の中では一言も喋らなかった理紗が、車に乗った途端、自嘲的に笑いだした。
一通り笑って、ため息を吐いた。
「あんなに変わっているなんて、月日の流れって怖いな」
「会わないほうが良かった?」
「どうなんだろう。でも、四年前はまだ付き合っていた頃の修ちゃんに見えたのに」
そこまで言って、理紗は顔色を変えた。
窓の外をじっと見つめ、体に変な力が入っているように見える。
そっと覗き見ると、前を走る車のテールランプを見つめる理紗の瞳の中で、涙が揺れ始めていた。
「……やっぱり、私、赦せない。だって、私は……人を巻き込んで、あんな大変なことまでしちゃったというのに」
急に怯えたように肩をぶるっと震わせた理紗の姿が冬真には気になった。
そういえば、駅のカフェでも理紗は体を震わせていた。
「どうした?」
恐る恐る冬真の顔を見る理紗に言葉はない。
「具合でも悪いの?」
理紗は項垂れ、涙をぽろぽろと零した。
「店長さんは本当のことを知りたい? どんなに腹立たしく、赦せないことでも?」
「なんのこと?」
「私のこと、絶対赦せないって思うよ」
訳がわからず、冬真に変な緊張が走った。
こういうのは苦手だ。
知らないということで追い詰められていく感覚。
心臓の奥がざわつき、嫌悪感が生まれる。
こういう時はいい話なんて出てこない。

