ゆえん



駅の中のカフェでテーブルにつき、コーヒーを三つ注文した修二は、冬真の顔と理紗の顔を見ながら、訊いてきた。


「急に、しかもわざわざこっちまで来て話したいことって?」


修二は理紗の今までの想いになど気付いてはいない。

自分の中では遠い昔のことであるように、理紗にとってもそうであると疑っていないようだ。

冬真が説明しようとすると、遮るように理紗が話し出した。


「四年前に、戻ってきたことあった?」

「え、ああ。じゃあ、あの時、菜穂が見掛けたのはやっぱり理紗だったんだな」

「見掛けた?」


 理紗の表情が変わる。


「ああ。でもすぐに見失った」

「探してくれたの?」

「……合わす顔ないだろ、俺も菜穂も」

「今は菜穂って呼び捨てなんだね」


理紗が呟くのを聞きながら、修二は運ばれてきたコーヒーに砂糖とミルクを入れ、口をつけた。

コーヒーを味わいながら、そして静かに言う。


「こうして理紗と話す日が来るとはな」


理紗が息を飲む。


「居なくなったとき、私に悪いと思った?」


顔を上げ、修二が理紗の顔を見る。