「一瞬、沙世ちゃんかと。いや本当に似てるな。まさか理紗が一緒に来るなんて。もう、十年ぶりくらいだね」
理紗が頷き、次の言葉を発しようとしたときに修二の言葉が続いた。
「その……なんだ……」
言いにくそうに言葉を濁す。
次に来る言葉を理紗は黙って待っていた。
「……俺のこと、赦せないだろうけど……今更だけど、理紗にはいつか謝らなきゃと思っていた」
「……」
「でも、あの時、理紗のことを考えて思い留まるほど、大人じゃなかった」
理紗の表情が強張っていくのを冬真は感じた。
なんと無防備で飾り気のない本音なのだろうか。
それがあまりにもストレートな言葉だったかゆえに理紗の心に刃となって刺さった。
それと同時に理紗は認めざるを得なくなった。
自分が修二に夢中だった頃、修二は菜穂に夢中だったのだと。
冬真は後悔し始めていた。
横で理紗の心が砕ける音が聞こえるようで、胸が詰まる。
「……今もあの人と一緒に居るの?」
「ああ」
「幸せなんだね」
ぴしゃりと言い切った理紗にさすがに修二も何かを感じ取ったらしく、軽く咳払いをした。
「立ち話もなんだから、コーヒーでも飲みに行こう」
「そうだな」
冬真も賛成し、歩き出した修二の後ろを冬真が、その後ろを理紗が歩いた。

