大好きな人が来る図書館に行って、彼の姿を見てはときめき、そして菜穂にそのことを一部始終伝え、恋の相談をする。
菜穂はいつも笑顔でアドバイスをくれる。
高校一年生の理紗の日常は、それまでのものとは違い、数々のときめきと穏やかな空気で包まれていった。
「同じ大学にさ、そっくりな人がいるよ」
図書貸し出しのカウンターで、理紗と菜穂が話していたところに修二は声を掛けてきた。
修二は理紗に似ているという人は友人の彼女なのだと修二は言った。
「本当に似ているんだ。機会があったら、会わせてみたいな」
その日から、三人は顔を合わせたら言葉を交わし、徐々に親しくなっていった。
菜穂が理紗の気持ちをそれとなく会話に入れて、はにかんで微笑む理紗を修二も気に入っていた。
菜穂は仕事中でもあるので、自然と修二と理紗の二人で過ごす時間が増えた。
理紗が見せる修二に対しての純粋さが彼には可愛いくて仕方ないように見えた。
同じ時間を共にしている二人を見て、周りの人からも公認の仲のように言われ、理紗は有頂天だった。
それと同時に、クラスメイトに馴染もうとする努力を理紗は全くしなくなっていった。
友達なんて必要ない。
大好きな修二と、優しい菜穂がいれば、全然淋しくないとまで、思っていた。
そんな理紗を、菜穂は純粋な気持ちだけで可愛がっていたわけではなかった。

