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理紗と菜穂が親しくなっていったきっかけは市立図書館だった。
それまでは家が隣同士だという接点だけで、高校生の理紗と主婦であった菜穂は顔を合わせても挨拶を交わす程度だった。
当時の理紗は、その人も羨む容姿と、一人っ子で自己中心的な言動が目立つためか、中学の時から同級生の中では孤立してしまっていた。
高校ではクラス内の女子に派閥のようなものが出来上がっていて、馴染めないままに日々を過ごしていた。
理紗が一人で毎日のように図書館に通う姿が、菜穂の目にも焼きついていた。
その姿に自分の高校時代の姿を重ねて見ていた。
「その本、面白かった?」
菜穂が理紗に声を掛けた。
何気にない言葉でも菜穂から掛けられた言葉が理紗には嬉しかった。
「はい。この作家が好きなんです」
翌日は理紗から菜穂に声を掛けていった。
理紗は、図書館で菜穂の姿を探してまでも話すようになり、菜穂も自分を慕って来る理紗を可愛いと思うようになっていた。
家が近くということもあって、菜穂の仕事が終わるまで理紗が待って、一緒に家まで帰ったりするくらいにもなった。
そして菜穂に会うために通っていた図書館で、理紗は同じ図書館に通う大学生の今内修二と出逢い、一目惚れをしたのだ。

