「あの時は本当にお前に世話になったよ。沙世ちゃんは元気なのか? お前たち別れたりしてないよな?」
何年もこの町と縁を切ったままの修二なのだ。
冬真と沙世子が結婚したことも知らないでいたのだ。
「結婚したよ。沙世子と」
「そうか。やっぱりな。子どもは?」
「女の子が一人」
「女の子か。可愛くて仕方ないだろう?」
「ああ、可愛くって仕方なかったよ」
沙世子と真湖がもういないことを修二に言わなければならないと思った瞬間に冬真の体が強張った。
「なんだよ、もう反抗期に入ったのか。うちの子も生意気盛りだけどな。……一度子どもたちを連れて帰ったことがあるんだ。家族で一日だけ。子どもたちに俺たちの育った町を見せに連れて行ったんだよ」
「……そういう時は連絡しろよ」
懐かしい友との会話がよほど嬉しいのか、修二は自分のことを話す側になってくれていた。
冬真の家族の話題から話が逸れていく。

