修二は大学生当時、冬真とバンドを一緒に組んでいた同級生だ。
いつも本を読んでいておとなしい奴だと思っていたが、冬真が辞めてしまったヴォーカルの代わりを見つけるため、大学構内に貼り出しておいたヴォーカリスト募集を見て名乗りを上げてきた。
修二は細くて中性的な顔立ちだったので、女みたいな声しか出ないのではという予想に反し、爆発的な声量の持ち主だったので、すぐに決まったのを覚えている。
冬真と修二は、好む音楽が似ていることもあって急速に親しくなっていった。
親しくなってからは沙世子も加えて三人で出掛けたこともあった。
冬真は修二が口にしたある言葉を思い出した。
〈沙世ちゃんをちょっと幼くした感じの女子高校生がよく図書館に来ているよ〉
それを聞いて実行はしなかったが、一度三人で図書館に行ってみようと話したことがあった。
修二がメンバーになって半年が過ぎた雨の夜、修二は一人の女性を連れて冬真の部屋にやってきた。
何も訊かずに自分たちを東京まで車で送って欲しいと頼んできた。
修二の真剣な表情を見て、冬真は何も訊かずに頷いた。

