三十分後に、浩介と楓が冬真の家までタクシーでやってきた。


「よほど困っていたみたいだな」


理紗を見て、浩介が苦笑いをした。

二人が来たことに理紗はなぜか不服そうだった。

それを敏感に感じ取った楓も苦笑いしている。


「この人はここに誰も泊めたりしない人よ。あなたじゃなくても、他の誰でも、ね」

「とにかく今日はうちで預かるよ。心配するな」

「すみません」


浩介に頭を下げる冬真を見て、理紗は悲しげな目をした。


「やっぱり家に帰ります。送ってもらえますか」


浩介と楓に向かいきっぱりと言った理紗に、二人はやや呆れた表情をしたものの、待たせてあったタクシーに三人で乗り込んだ。


「困らせたかっただけか」


呟くように浩介が言うと、理紗は驚いたように浩介を見て首を横に振った。

車の窓から外を眺めていた楓が浩介のほうに向き、驚いた表情を見せた後、目配せをする。

理紗がひっそりと泣いていた。