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激しい雨音がして、冬真は飛び起きた。
視界に広がったのは部屋に干した洗濯物で、大きく息を吐きながらそれを眺める。
ここ三日、雨続きだ。
頭痛がする。
体にまとわり付く汗とTシャツがより不快指数を上げていた。
雨は好きじゃない。
それでも毎年、梅雨は来るのだ。
雨の日になると、店の前に出す本日のメニュー看板を書く気が萎える。
雨空を見上げると、まだ幼い真湖が泣いているように思えてならないのだ。
泣き止まない真湖を沙世子が必死であやしているが、その表情は笑顔ではなく、暗く疲れている。
そんな姿浮かび、最後には左手を冬真のほうに伸ばし、助けを求めているように見えた。
そしてそのまま、雨空に吸い込まれていくのだ。
頭を左右に振り、深呼吸をしてから『You‐en』の中へ戻っていく。
今の生活は悪くない。
だからと言って、自分はいつまで生きていかなくてはならないのだろう。
雨の雫が髪から落ちてきて冬真の額から目尻に降りてきた。
後方でドアが開く音がして、足音が冬真に近付いてきた。

