ゆえん



レアチーズケーキを食べたあの日から、一週間ほど理紗は姿を見せなかった。

その間に、直斗たちのバンドは一度、スタジオに練習に来ていたが、その日も理紗は顔を出さなかった。


「ここ何日間か、来てないね。あのコ。また駄目だったみたいね」


呟くように言う楓の台詞は妙に冬真の心を揺さ振った。


「また、ですか?」

「いつも長続きしてないみたい。本当は淋しがり屋なんだと思うのだけど」

「……」

「誰かを探しているように見えるときがあるの。誰かの面影を追っているって言うほうが正しいのかな」

「そうですか」

「淋しがり屋なのよ。誰だって」


珍しく楓が俯いて、ポツリと言葉を落とした。

そういえば、浩介は三日前にレコーディングで東京に行く、と言っていた。

まだ帰って来てないせいもあるからか、いつもの楓が口にしない言葉を聞いた気がした。


「さあ、もうすぐ学生たちが来る時間ね」


顔を上げたときにはいつもの楓の笑顔が戻っていて、冬真も微笑んで頷いた。