「パパ、今日のスープの味見、してくれた?」
私は毎日店に出すスープを担当し、冬真さんに味見をしてもらう。
「ああ、いい味になっているよ」
冬真さんは親指を立ててスープの味を評価してくれる。
本日はそら豆のスープ。
私の自信作だ。
「理紗のスープには固定客が多いはずだ」
きっと今、笑顔の冬真さんは幸せなのだと感じる。
彼の幸せが私の幸せであり、これが沙世子さんの願いであると思える。
裏切られ、利用され、他人の心の痛みなど考えられず、自分の事しか見えてなかった私が、冬真さんに出逢って、ここまで変わることができたなんて奇跡だ。
毎日同じことの繰り返しでも、どんなに平凡でも、その在り難さを感じることが出来る。
沙世子さんの命と心がそれを私に教えてくれたのだと感じている。
月を見上げるたびに冬真さんが沙世子さんを想うなら、私はその横で彼女に誓い続けよう。
〈私が冬真さんの幸せを守っていきます〉
了

