ゆえん



冬真さんがマユを育てると言うなら、私も一緒に育てたい。

冬真さんとマユと三人での生活が続けられるなら、私はもう何も誰も望まないでいられると思った。


「マユは真湖じゃない。そして理紗も沙世子じゃないんだぞ」

「もちろん、分かっています。それに理紗と一緒に暮らすとは言っていません」


私の希望は瞬時に打ち消された。

私とは一緒に暮らせないなら、どうして今、三人での生活を送っていられるのだろう。

この場でこのまま二人の会話を聞き続けることが急に怖くなった。

それと同時に今、冬真さんが私のことを『理紗』と言ったことに気付いてしまった。

マユが居ないところで、私のことをそう呼ぶのは初めて聞いた。