ゆえん



ドアが閉まる音がした。

冬真さんは自分の部屋に入ったようだ。

だがすぐにドアの開く音がして、別のドアをノックしていた。


「木下、起きてる?」


冬真さんが私の部屋のドアを叩いたみたいだ。

むろん、返事が出来るわけではない。

私は眠っていることにしなくてはならない。


「ネットで、良さそうなスープのレシピを見つけておいたんだ」


冬真さんの言葉に返事が出来ないまま、私は目を閉じた。

眠っていると判断したのか、冬真さんが台所の冷蔵庫を開けるような音がした。

そしてしばらくすると、リビングのソファーに腰掛ける音もした。

しばらく起きているのだろうか。


緊張しながら冬真さんが自分の部屋に入るまで、私は同じ姿勢でずっと待っていた。

冬真さんの足音がして、またキッチンのほうで音がする。

冬真さんはまだ寝ないみたいだ。

困ってしまった。

この体勢でずっといるのは疲れてくる。

でも動くわけにはいかない。

私はひたすら冬真さんが部屋の戻って眠ってくれるのを待った。