ゆえん



いったい美穂子はどこで何をしているのだろう。

こんなに小さい子供をこんなに不安にさせて置いていくなんて。

置いていく側は置いて行かれる側の気持ちを少しも考えていないのだ。

そう、あの菜穂と修ちゃんもそうだったように。

自分に母性などあるとは思わないけれど、小さいマユの寝顔を見ていると、美穂子に対して無性に腹が立ってきた。


マユが寝息を立て始めたのを確認してから、私はリビングへ行った。

冬真さんが沙世子さんのレシピノートを見ながらコーヒーを飲んでいた。


「マユは眠った?」

「はい」

「そうか。お疲れ様。コーヒーで良かったら、そこに入ってるから」


冬真さんが台所にあるコーヒーメーカーを指す。

「今日買ってきたんだ」と小さく笑っていた。


「今日はすごい出費だったんじゃないですか」

「そうだなぁ。久しぶりだよ、こういう買い物は」


しみじみと言った後、冬真さんはレシピノートを閉じた。


「野菜メインのデザートを考えていた時に思いついたのだけど、デザートは今までどおりに戻して、野菜スープを作ろうかと思うんだ。日替わりでスープの素材や味を変えてさ。スープならデザートより手間もかからないし、朝大量に作っておいても大丈夫だろう」

「そうですね。朝ごはんをスープで済ませている人もいるくらい、手軽で栄養も取れるものですよね」