ゆえん



五年前のあの雨の日、修ちゃんを見掛けて道路に飛び出した私を避けて事故を起こした車を運転していたのは、冬真さんの妻である沙世子さんだった。

その車には一人娘の真湖ちゃんも乗っていたのだ。

正直に話したあの時から、拭いきれない罪悪感があった。

私に避難の目を向けてもらえればそのほうが楽だったかもしれない。

でも、冬真さんは誰かを責めるより、自分を責める人だった。


「あの時、俺が沙世子に送ってもらわなければ、沙世子はあの時間にあの道を通ることはなかった。俺がタクシーで行っていれば、君もあの事故のことで苦しまずに済んだだろうに」


そう言って済まなそうに眼を伏せてしまう人なのだ。

そしてその言葉を発した翌日の冬真さんはいつもお酒のにおいがする。

疲れた表情で、黙々と開店準備をしているのだ。

そんな姿を見ると、私は胸が詰まりそうになる。

一人であの広い家でお酒を飲み、亡くなった妻と子供に詫び続けている姿を想像してしまうと、切なくて遣り切れない。

私の中の罪悪感は亡くなった二人に対してよりも、冬真さんの想いに対してのほうが強いくらいだった。