一度帰ったはずの楓が、いつの間にか厨房に立っていて、夕食を作っていた。
楓がマユの傍に行って、食事のことを伝えたのか、マユは楓と手をつないで、厨房へ向かった。
「トウマとリサもいっしょにたべる?」
「カエデと一緒に食べよう」
マユはまた私の顔を見る。
楓はそれを見て「じゃあ、リサと一緒に食べようか」と言うとマユが明るい顔を見せた。
「店のほう、代わるから、マユちゃんと食べてきて」
「すみません」
楓は小さく頭を左右に振り、カウンターのほうへ行った。
「じゃあ、一緒に食べようか」
「うん」
二人で「いただきます」と言った後に、冬真さんが厨房に入ってきた。
「今、そんなに人がいないから、先に食べてこいって言われたよ」
思ったより楓は気の利く女なのかもしれない。
少しだけ彼女がみんなに好かれることを認めてもいい気がした。
三人でテーブルを囲んで食べることが当たり前のように感じる。
きっと家族とはこういうものなのだ。
冬真さんは五年前のあの日まで、こういう光景の中で過ごしていたはずなのに。
それを思うと私は罪悪感と自己嫌悪で目頭が熱くなってしまう。

