ゆえん



「いきなり知らないおばちゃんに抱っこされたら、びっくりするよね。えっとね、トウマとリサと一緒にこのお店で働いているカエデだよ。仲良くしてね」

「うん」

「理紗ちゃん、冬真君から事情は聞いたよ。お友達のお母さん、持ち堪えてくれるといいね。私も協力するから、マユちゃんに寂しい思いをさせないよう、頑張ろう」

「そうですね」


冬真さんたら、『親が手術したことに』とは言っていたけど、それを『お母さん』と設定したことを私は聞いていない。

しかも楓の言葉からすると、生死に係わる手術をしたことになっているようだが、それも打ち合わせにはないことだ。

こういうところから、嘘ってばれるのに不用心だな。

嘘に慣れていないことがよく分かる。

まあ、一般的に女のほうが嘘は上手なのかもしれないけど。

人見知りをしない子に思っていたけれど、マユは私の傍を離れようとせず、楓がマユを呼ぶと、必ず私の顔を見て、許可を取るように私が頷くのを待っていた。

普段は何でも出来る女の顔をしている楓も、出産の経験がないからか(それは私も同じだが)、マユに対してかなり気を遣っているらしく、どことなくぎこちない。

その様は私にしてみれば気味が良かった。

マユが楓より私を信頼しているように思えたから。

そして、マユの小さな手がいつも私を求めているように感じて、心がキュッとなる。

求められるから応えたくなるという感情が私の中で生まれていた。

そのせいか、昨日よりずっとマユが可愛く見えた。