ゆえん



店に行くと既に葉山楓が来ていた。

冬真さんが買い出しに行くからと、楓に『You‐en』の応援を頼んだのだろう。

楓はマユを見て、弾けそうな笑顔を見せて近寄ってきた。


「なんて可愛いの! マユちゃんと言うのね。私は楓よ、カ・エ・デ。言えるかな?」

「カエデ」

「そう。お利口ね。おいで、抱っこしよ」


楓がマユの前で両腕を広げる。

マユは振り返って私を見た。

何かを確認するような目をしている。

その表情を見て、口元が緩んでしまう。

私が小さく頷くと、マユは楓に向き直り、恐る恐る手を出した。

楓は満面の笑みでマユを抱き上げる。

マユの小さな体は軽々と持ち上げられ、楓は満足そうに抱きしめていた。

マユはそんな風に抱きしめられることに慣れてないような顔をして、身を固くしていた。

それに気付いた楓がそっとマユを椅子の上に下す。