ゆえん



冬真さんがこの子の世話をするのだろうか。

一人でやるつもりなのだろうか。

冬真さんの家にマユが居たら、絶対に楓が手伝いを名乗り出るだろう。

それに私の友達の子を預かることにしたと説明するならば、私が世話をしなくてはならないはず。


「冬真さん、この子の世話は私がしたほうが……」


言いながら、世話って何をすればいいのだろうと不安が込み上げてきた。

一人っ子の私は子供の世話なんて経験がない。

今までの生活の中でも無縁のものだった。


「そうだな、君の友達の子を預かる設定だからなぁ」


冬真さんは少し寂しそうにマユを見つめていた。

ここで彼に「じゃあお願いするよ」と言われてしまったら、今夜からどうしたらいいのだろうか。


「そうだ、じゃあ私も冬真さんの家で生活していいですか? その、このコがいる間だけ」


閃きと同時に口に出して言ってしまった。

一瞬にして不安がときめきに変わる。

彼と同じ家で生活できるかもしれないと。こんなハプニングでもなければ、口にできない言葉だった。