「とにかく、母親が誰かは分かっているのだから、しばらくうちで預かるか」
「え、冬真さんがですか?」
驚きのあまり、店長ではなくて「冬真さん」と呼んでしまった。
言ってしまった後、目を見開いて口を押えたが、冬真さんは笑って「いいよ、それで。君さ、自分で気付いていなかったかもしれないけど、時々『と、店長』って言うだろ。あれ、変だった」と言った。
恥ずかしくて、自分の顔の温度が上がっていくのを感じた。
この人の前でだけは私にも(恥ずかしい)という感情が湧き上がるのである。
それと同時に、名前で呼んでいいと許可をもらえたことが嬉しかった。
冬真さんは眠っているマユの額をそっと撫でながら「まだ三歳くらいかな。目が離せない時期だな」と呟いていた。

