「とりあえず、浩介さんに連絡を取るしかないな。ただ、今はロサンゼルスでレコーディング中なんだ。この子の母親の名前を教えてもらえるか」
「旧姓しか知らないですけど、菊田美穂子です」
冬真さんはカウンターに戻り、私が言った名前をメモしていた。
「それと、このことは誰にも言わないでいてくれるかな。楓さんには、君の同級生の子供を預かったということにしておこう。理由は……そうだな、彼女の親が手術したことにして」
「え、ああ、はい」
「絶対に内緒に」
冬真さんが念を押すので、私は大きく頷いた。
葉山浩介の子として、というのは、まさか美穂子があの浩介さんと深い関係を持っていたということだろうか。
そう考えたが、想像するのは可笑しかった。
先ほど見た美穂子の印象から、浩介さんが相手にするとは思えないから。

