ゆえん



目にして、書いてあることが理解出来なかった。

どういうことかと、この短い文を何度も読み返してみたが、内容が理解できない。

何が『よろしくね』だ。

そんな言葉を受け取るほど私は美穂子との付き合いが無いではないか。


グラスにオレンジジュースを入れて、冬真さんが戻ってきた。

私の様子がおかしいのに気付いて「どうした?」と声を掛ける。

迷いもせず、冬真さんにその紙切れを差し出す。

彼もきっと一度読んだだけでは、この二行が意味することを理解出来なかったようで、しばらく紙切れを見つめていた。


「同級生って言っていたよね?」

「はい。でも小学校以来で、連絡先も知りません」


冬真さんは難しい顔をして、紙切れを見つめている。

大人たちの表情の変化を敏感に感じ取ったのか、マユは泣き出しそうな顔をしていた。

気付いた冬真さんが優しげな表情に戻り、マユの頭を幾度となく撫でる。


「えっと、マユちゃんだよね。ママは用事があるらしい。このお店でお利口に待てるかな。今、美味しいケーキを持ってきてあげるから」


マユの表情が少し和らぎ「うん」と笑みを見せた。


「そうか。マユちゃんは良い子だな」


褒められたことが嬉しいようで、マユは大きな声で「うん!」と返事をした。