ゆえん



「ママを待っているんだね」

「うん」

「そっか。もっとジュースを飲むかい?」

「うん!おれんちじゅーちゅ」

「わかった。ちょっと待っててね」


冬真さんはマユの頭を撫でて、彼女のグラスを持ってドリンクバーへ行った。

マユは何かを思い出したように「あっ」と小さく声を出し、背負っていたピンク色の小さなリュックを外し、中から取り出した一枚の紙を私に差し出した。


「ママが、おねえちゃんにわたして、いったの」

「私に?」


マユはにこっとして、一度テーブルに置いたウサギのぬいぐるみを再び抱きしめた。

マユに手渡された小さな紙切れには、ボールペンで走り書きの文字が二行だけ書いてあった。


〈葉山浩介の子供として育てて。
 名前は真由。よろしくね。〉