ゆえん



「おかえり」


冬真さんが声を掛けてくれる。


「これだけあれば、大丈夫ですか?」


差し出したポリ袋を冬真さんが覗き、指の長い綺麗な手でOKサインを出してくれた。


「冷蔵庫に入れておきます」

「ありがとう」


この声で発せられる「ありがとう」が私はとても好きだ。

いつもクールな瞳が優しく目尻を下げて放たれる言葉である。

小さく頷いて私は冷蔵庫の中へオクラを入れた。