ゆえん



「私たちが駆け落ちした夫婦だって、楓から聞いているでしょ」

「はい」

「駆け落ちして、親の反対を押し切って結婚した。二人の愛を貫いた。そう言えば、とてもロマンティックだよね」

「そう思います」

「でもね、恋愛のハッピーエンドの後も人生って続くのよ。それなのに、私は浅はかで、ハッピーエンドに酔いしれたまま、日々を過ごしてしまったの」


瞳さんは今まで自分たち夫婦のことを語るときに笑顔しか見せなかった。

だが、この時だけは辛く悔やむ表情で、今までは聞かせてくれていなかった二人のことを俺に話してくれた。