ゆえん



「浩介君は将来、どんな仕事をしたいの?」


不意に訊かれ、どうしようか迷ってけれど、俺は隠さずに親と話し合ったことを瞳さんに話すことにした。

高校を卒業してから、東京に出て音楽の道に進むことを告げると、瞳さんは微笑みながら頷いていた。


「浩介君はギターが好きなのね。曲も書けるなんてすごいよ。私が思うには、浩介君なら歌詞も素敵なものが書けると思うよ。楓から聞いた話にしても、こうして私と会話している中でも、あなたは人の心に入り込む言葉を持っている人だから」

「本当ですか」

「うん。浩介君の曲、今度聴かせて頂戴ね。もちろんギターも」

「練習頑張ります。そして東京で絶対成功してきます。成功したら……」


俺は大きく深呼吸をして、姿勢を正した。


「迎えに来ます。楓と瞳さんを」

「え、私も?」

「楓と瞳さん、二人を幸せにしたいと思っています」

「嬉しいことを言ってくれちゃうのね」


瞳さんは小さく微笑んで瞼を閉じた。