ゆえん



俺はただ、ギターが上手くなりたかった。

自分でもっと曲が書けるようになりたかった。

それを聴いた人の胸を打てるようになれたら、どんなにいいだろう。

その時、初めて俺が練習し続けてきた日々の価値があるように思う。

それには練習しかないと思っていた。


「俺は、浩介はギターで食っていくつもりなんだろうなって思ってた。練習量が全然違うもんな」


要司の言葉に正幸も頷いていた。


「うん。俺も。俺はこれからも趣味としてドラムを続けたいとは思うけれど、浩介は違うと思っていた」


二人の言葉に驚く。

そんな風に俺を見てくれていたのか。

自分よりも周りの人間が俺を理解しているというのだろうか。


「俺、具体的には何も考えていなかったよ」


アンプにスイッチを入れ、俺はギターをかき鳴らした。