ゆえん



終夜祭の時、珍しく楓が俺を捜して傍に来てくれた。


「浩介、とってもカッコ良かったよ。なんか、こう、目が輝いていた。本当に好きなんだね。音楽」


楓が褒めてくれたことが嬉しくて、普段の俺からは想像もつかないようなことを口走ってしまった。


「楓がカッコいいって思ってくれるなら、世界一を目指すよ」

「本当? 世界一のギタリストかぁ」


言ってしまった後に、俺って馬鹿だなぁと思った。


「一緒に踊ろうか」


校庭のフォークダンスの輪を指さして、またも普段言わないことを俺は口走った。

断られたり、茶化されたりしたら、恰好悪いと思ったが、楓は満面の笑みで「うん」と頷いてくれた。