要司と本屋で時間を潰してから、俺は楓がアルバイトをしているクリーニング店の前で、クリーニング店の閉店時間まで待っていた。
クリーニング店に入っていった客たちが、帰るときも同じ場所に立っている俺を見て、怪訝そうな表情をする。
俺は少し歩いたり、戻ってきたりと動きながら時間を潰すことにした。
中から店長らしき中年の男が出てきて、俺の傍までやってきた。
「なんだ、葉山さんとこの息子か」
「こんばんは」
店の前をうろうろしていたから、怪しまれたのだろうと俺は小さく頭を下げた。
「おう、久しぶりだな。おやじさん、おふくろさんは元気か?」
「はい。二人ともすごく」
「そっか。誰か待っているのか」
「あー、えっと望月さんを」
「楓ちゃんか。浩介がいるなら安心だな。もうすぐ終わるから中で待っててもいいぞ」
「あ、俺、ここで大丈夫です」
「そうか」
店長は新たに来た客の姿を見て、中へ戻って言った。
「浩介がいるなら安心だな」と言った店長の言葉にこの時の俺は深い意味を感じたりしていなかった。

