駄目で元々と思いながら、俺は母親におねだりしてみた。

意外にも母親は条件を出してきて、それをクリアすれば、安いエレキを買ってやると言ってくれた。

その条件とは一学期の中間テストで、学年で十番以内に入ることだった。

母親は、俺のことを長男に比べて出来の悪い次男だと思い込んでいたらしい。

小学校では学年での順位など出たことがなかったから、俺の学力を低く見ていたようだ。

だが、この条件は俺にとっては楽勝だった。

家で勉強していなくても、授業の内容がわからないことは今まで一度もなかった。

ただ今回はギターゲットのため、油断するわけにはいかないし、順位がどのくらいかはわからないので、全科目満点を目指して家でも勉強をしてみた。


俺の予想通り、中間テストでは学年で四番の成績を取ることが出来た。

数学は満点だったが、英語のスペルを二ヶ所間違えたのと、社会で一問、理科でも一問間違えていた。

全科目満点でなかったことが悔やまれたが、母親はとても喜んで、約束通り俺は赤く艶めくエレキギターを手にすることが叶った。


「おまえ、すごいんだな」


この時ばかりは、洋輔も俺を誉めてくれたし、父親も誉めてくれた。

いつも洋輔より出来が悪いと思われてた俺を認めてもらえた瞬間だった。


その後はギターにのめり込み、成績は三十番以内にいることは出来たが、俺にとって成績はどうでもいいことに分類されていた。

親も、三十番以内をキープしていることで、口うるさく言ってこなかった。

この成績なら、地元の公立高校には余裕で入れるだろうと安心していたのだろう。

学校から家に帰ってきたら、ギターを弾く毎日。

そして、俺は中学校にフォークソング部という名の部が、実はロックバンドの活動の場だということを知り、この部に入部した。