ゆえん



名ばかりが『フォークソング部』となっている部に俺は所属していた。

名ばかりというのは、実際に演奏している楽器がエレキギターだったし、曲も主にロックを、特にディープ・パープルのコピーばかりやっていた。

俺がエレキギターに興味を持ったのは兄の洋輔の影響だ。

俺が中学に入ってまもなく、高校に入ったばかりの洋輔がエレキギターを背負って帰ってきた。


「洋輔、それどうしたの?」


自分の部屋で愛おしそうにギターをいじっている洋輔をドアのところから顔を出して見ていた俺は、興味津々に訪ねた。


「買ってきたんだ」

「え、誰の金で?」

「自分のに決まっているだろ」


洋輔がお年玉の半分を毎年貯金していることを俺は知っていた。

その金を使って買ってきたのだと洋輔は得意げに言った。

青く光るギターのボディの曲線は、とても魅力的に見えた。


「俺にも触らせてよ」


洋輔の正面に座り、俺はそのギターを眺めた。


「俺が一曲、弾けるようになったら、触らせてやるよ」

「なんだよ、それ。じゃあ、今はだめなの?」

「だめ。触りたけりゃ、自分の金で自分のを買ってこいよ」


そんな大金、計画性のない俺にあるわけない。

仕方なく、俺は洋輔が練習するのを横で見ていた。

三日もしないうちに、俺はギターを触りたくて我慢できなくなっていた。

洋輔が高校にギターを持っていっているので、いつもエレキは洋輔と一緒だ。

いないときにこっそりと触る機会がない。