「失礼、」
その言葉に顔を向ける
『斗真さんっ!』
「こんばんは、澪ちゃん」
爽やかな笑顔でワイングラスとボトルを持って現れた
飲める?と聞かれ頷く
グラスに注がれる赤ワイン
いつも社長と向かい合うが
今日は社長のお兄さんの斗真さん
「澪ちゃんと僕の時間に、乾杯」
カン、と合わさるワイングラス
私と斗真さんの時間ってなんだよ?
突っ込みたくなるが、やめておく
「絢斗は?相変わらず忙しいの?」
新しく店をやるって言ってたっけ?
そう言ってグラスを口にする斗真さん
斗真さんも知っていたんだ
私には言えなくても斗真さんには言っているのかと思うと
先ほどの後悔が嘘のように無くなる
『やめたようですよ。私には関係ありませんがっ。』
私もワインを流し込んだ

