コツコツ、コツコツ、
夜の道はヒールの音が響く
早く帰りたいと思いながら
早歩きになる
マンションのエントラスをくぐり
エレベーターのボタンを押す
早く会いたいという気持ち
今日に限って、誰かがエレベーターを使っている
階段を使おうか?
いやいや、階段を使う程の若かりし頃のような体力はない
やっと降りてきたエレベーターの扉が開く
降りる人を待っていられない気持ちもありドアが開いた途端、乗り込む
ぶはっ、と何かに当たったかと思えば
それは私が大好きな人の胸だ
顔を見なくても、この香りでわかる
「おかえり、澪」
『…ただいま』
こうして私達の喧嘩は
あっという間に終了
エレベーターのドアが閉まるとすぐ
社長は私の唇を塞いだ
エレベーターの中だということを
忘れさせてくれるくらい
熱のこまる熱いキスを…。

