茜色の夕焼けを追いかけて、私の前を少年が走って行く。どんなに手を伸ばしてもどんなに速く走っても、追いつくどころか、遠ざかって行ってしまうその背中。少年の名前を叫んでみても、少年が止まることは無かった。今はもうその名前すら、覚えていないのだけれど。
「まもなく福江港に到着します。」
そんな、アナウンスで私はようやく目を覚ました。なんだか長いとてつもなく長い夢を見ていた気がする。
「ここが五島、両親の生まれ育ったところ、、、」
そう、ここは私、一条五月の、両親が生まれ育った場所で、私の高校生活を謳歌する場所である。