偽恋‐Nisekoi‐10

2月27日

息ができなくなった。
苦しくなった。
どこに行っても行き止まりの
迷路に迷い込んだように…。

昼間の夢をここにて語ろうか。

私は車の助手席に乗っていた。
あの人が夢に出てきた。


いつもの光景が、今は夢の中でおきている…。

アナタと私はどんな関係?
自問自答してみる。
繋がってはいけない関係。
そんなこと、わかってる。

そう、私たちは決して
恋人同士なんかじゃなかった。


夢の中…。

ここはどこか…分からない。
見た事のない街を私たちは
車で走り抜ける。

外がよく見える。
いつもはオレンジ色に滲む道路を
ほぼ無言で駆け抜ける。

夢の中は
昼と夕方の境目だった。



近代的な建物の街の中には
海があった。


どこか人工的。
新しい街のようで、
でも、ここには沢山の人がいた。

誰が海で泳ぐわけでもなく
こちらへ押し寄せる小さな波に少し触れ
どちらかと言うと、この人工的な海の完成を
ただただ、鑑賞に浸ってるかのような…。



あなたは、
ここの街に用事があるらしい。


黄色い三角錐の屋根。
白い壁。
御伽の国みたい。

でも、
いったい何をしにあなたは
ここに来たのか私には
わからない。


透き通った海。
波がキラキラしてる。
なんだか柔かそうで優しい。


穏やかだ…。


こころが
全て洗い流される。


冬の海はこれ程
静かなものなのか…。


「ねえ、ジュンくん。海だよ」

私は、ジュンくんと言う
小さな男の子を連れていた。



はしゃぐ男の子姿を
あの人は嬉しそうに見てる。

そう、ジュン君は
あの人の子。

あなたの子供なのに
夢の中では違う名前で呼んでいる。


あたしは
ジュン君の顔をじっと見た。

なんて、そっくりなの。
あの人に。

羨ましいほど似てるわ。
潤んだ目元とか。
恨ましいほど、あなたはあの人が
お父さんなのね。


実際にも1回会ったことがある。
当時は4歳ぐらいで、
会社の食事会の時に、あの人が
子供を連れてきた。
抱っこしてあげようと思って
「おいで」と言ったけれど
すごい人見知りされて、懐いては
くれなかった。

私も子供の世話は得意じゃないから
以降、遠くで見ているだけだった。

あの人と関係になる前だったから
懐かれなくても心が痛むなんてことは
なかった。


その時より少し小さい。