嵐side
春風の先代である真さんに招かれ、俺達は女しか会員になれない幻の店翔竜に来た。
外観も内装も全て女好みだが、何故か俺達でも抵抗がないような不思議な空間だった。
店に入ると、女たちの視線を感じた。
しかし女たちは街中の女とは違い大きな声で騒ぎ、俺達に媚びてくることはなかった。
寧ろ、静かに話す声は聞こえるがしばらくするとすぐにその声もなくなった。
俺は店内を見渡した。
視界に入ったのはバーカウンターに立つ少し小柄な……
嵐「間宮恋……?」
いや、あれは男だろう。
なんで俺はあの女を気にしているんだ。
視線を外しながらも、俺の注意はあの男に向いていた。
男が声を発したことで、完全に男であると思った。
もしかしたら、あの女の兄貴とかかもしれないが。
真さんは俺達を奥の部屋へ案内してくれた。
そこは先程のホールとは違う落ち着いた部屋だった。
真「呼んだ理由だがな……」
嵐「はい」
真「特にはない」
嵐「……はい?」
幹部まで全員呼んでおいて理由はないだと?
俺は自分の耳を疑った。
しかし、他の幹部を見ても全く同じことを思ったようだった。
真「強いて言えば、この店を見せたかったんだよ。お前らの先代はこんなことをやってるって」
優夜「なるほど……でもそれだけじゃないですよね?」
現春風副総長の須藤優夜が口を開く。
その言葉に真の目が鋭くなる。
真「お前ら……というか、特に嵐か。最近一人の女に執着してるって話を聞いてな」
俺はその言葉にピクリと肩を揺らした。
一人の女……それは間宮恋だ。
真「なぜ、いきなりそうなった?その女のどこがいい」
嵐「よく……わかりません。ただ気になるんです。気づいたら目で追いかけています。俺自身何がしたいのかはわかんないんです」
真「そうか……だが、その女はあまり勧められないな」
真さんの表情は真剣だった。
真さんは間宮恋について何かを知っているのか?
そんな考えが頭に過ぎる。
嵐「隆守さんもあの女に…間宮恋に執着しているように感じます。そして今の真さんも。間宮恋は何者なんですか?何があるんですか?」
真「そうか隆守はお前らの担任か……。恋のことは俺達からは教えられない。が、言えることは恋を泣かせるなら俺達は黙ってはいないってことだな」
今まで黙っていた幹部である鳴門麻也-naruto maya-がその言葉を聞き、真さんを見た。
それは同じく幹部の芹川拓人-serikawa takuto-も同じだった。
麻也「それはあの女が俺達よりも大切だと言うことですか?」
真「……そうだな。お前らは仲間だが、恋は言うならば家族だ」
拓人「…………家族」
拓人は家族をあまりよく思ってはいない。
それは真さんも同じだったが、それでも真さんは今までになく優しい顔で家族だと言った。
優夜「それは真さんにとってですか?それとも他の先代にとってもでしょうか?」
真「秋や隆守もそうだろうな。簡単に言えば4代目、5代目は間違いないだろう」
なぜ間宮恋なのだろうか。
4代目にも5代目にも姫は存在しなかった。
それでも尚、家族だと言うのは間宮恋には何かがあると言うことだ。
真「他に聞きたいことは?」
嵐「……あの表にいたバーテンダー」
その言葉に真さんが眉を動かした。
嵐「あいつは間宮恋の兄弟か何かですか」
真「あいつは………まぁ恋に関わりはあるが兄弟ではないな」
今の間はなんだったのか。
兄弟ではないが関わりがあると言うことは、あの人も4代目や5代目に関わりがあると言うことだろうか。
真「よし、じゃあ俺ももう仕事に戻るぞ。裏口まで案内するからそこから帰るといい」
嵐「ありがとうございます」
嵐side終

