大好きな君へ〜私はもう大丈夫だよ〜




そんなことを考えているうちにガチャッという音がして裏口が開かれた。


恋「おはよ〜」

秋「……は?恋?お前まだ6時半だぞ」


知ってるよバカ秋。


恋「あれから目覚めて、ご飯作って暇だから公園行こうとしたら春風いたからダッシュでここに来ただけ」

秋「ウィッグしててよかったな」


秋も私と同じことを思ったみたいだ。

秋はまるで主婦のように両手に買い物袋を持っていた。

主婦というか主夫か。


秋「学校は 恋「今日はサボる」」


秋の言うことに被せて返事をする。

言いたいことなんて分かるよ。


秋「ったく……めんどくさいだけだろ」

恋「………別にめんどくさいなんて思ってないし。昨日来れなかったから、今日は秋の手伝いしてやろうと思ったのに」

秋「今間があったよな。まぁいいや……今日だけだぞ?」


秋の上からものを言う態度に腹がたった私は秋に近寄り……


恋「俺がご奉仕してやるよ」


と、耳に囁いておきました。

秋はバッと音が聞こえそうなほど素早く私から距離を取った。


秋「お前……蒼モードになるなよ……」

恋「嫌か……?」


私は秋をまっすぐと見つめた。

もちろん、蒼モードで。

私の低い声が店の中に響く。


秋「お前の今の格好だと男にしか見えねぇから。男が男口説いてる状態になってるぞ」

恋「あー……そっか。じゃあ」


失念していた。

ある意味そのままでも面白そうだけど、私は敢えて更に声を変えた。


恋「御主人様、精一杯ご奉仕させていただきますねっ」


私が言うと同時に真の顔が真っ赤になった。

そして私も恥ずかしい。


真「そのへんで、や、やめとこうぜ。後で悠に殺されそうだ」

恋「なんで悠に殺されるの?」


そもそもなんでいきなり悠?

私は疑問に思ったが、真は答えてくれなかった。



はぐらかすように買い物袋を持って、厨房に入って行った。

逃げたな。


真「手伝ってくれー」

恋「はーい」


今声をかけたってことは、どうせ荷物の片付けだろう。

真はとんでもなく片付けが下手だから。

厨房に行くと案の定片付けを任された。


恋「片付けられないくせによく買うよね」

真「片付けようと思えば片付けれるし!」

恋「嘘つき。手伝わないよ?」

真「ごめんなさい。片付けれません」


素直でよろしい。

私は手際良く真の買ってきたものを冷蔵庫にしまっていく。

夜に店で出す料理は朝のうちに真が毎日買ってきているのだ。


真「そういえば忘れてたけど……今日春風くるよ」


私は手に持っていた豆腐を落とした。

は……?何言ってんのこいつ。そもそも言うの遅すぎ。忘れてたってなんだよ。と言うか翔竜って女だけしか会員なれないはずなんだけど何やってくれてんのこのバカ真。私があいつら苦手だって知ってんのにここに呼ぶか普通。真はバカだから頭回んないんだろうけどそれにしてもバカすぎるでしょ。もういっそ今日もサボってやろうか。


真「れ、れーん。全部聞こえてるよ……?」


無意識に口に出していたみたいだった。

でもこれがいらつかずにはいられない。


恋「で?接客はもちろん真がやるんでしょうね?」

秋「も……ちろん!仕事の打ち合わせが入らなければ大丈夫さ」


うわぁすごいフラグじゃん。

これで私に接客させたらマジでぶっ殺す。