しょうがねーな、まったく。

「今週、来週は、俺がずっと迎えに来れると思う。だから、あんまり焦んなくても良いよ。」

「え、なんで?」

「頑張っても、限界があるんだろ。いいよ。翼と遊びながら待ってるからさ。」

「ホント? ありがとう。」

「あ、でも、わざとゆっくり迎えに来るとかは無しね。先生に悪いし、翼が可哀相だから。」

「わかってるわよ、それくらい。」


ほら、結局、優しい。

言い方はともかく、私のことを気遣ってくれているのが伝わる。


このやんちゃな悪ガキみたいな笑顔は、照れ隠しの部分もあるんだろう。

私はこの笑顔が大好きだ。

笑うと下がる目尻も、その目尻にある泣きボクロも。

どこか得意げな微笑みに、気付けばいつもキュンとさせられている。


だから、もうあんな顔は見たくないし、いっそ忘れてしまいたい。

強気でちょっと意地悪なあいつと、毎日、一緒に笑っていたい。


あれ? でも、相手が女の人じゃなければ、それも可能だったのかな?

いや、ダメでしょ。

それじゃ単なる嫉妬じゃん。

今の私にそんな感情は身分不相応。

愛だの恋だの言う前に、まずは自立したシングルマザーとして、ちゃんと翼を育てあげないと。


事ある毎にときめいちゃうのは、あくまで内緒の気持ちだ。

あいつが誰を好きでいようと、私に咎める権利は無いし、黙って見守ることしかできない。

何があっても今の立場を保つべきだし、決して嫉妬なんかしちゃいけない。