私は唯一の目撃者なんだから、いつかはきっと話してくれるよね。

待ち続けるのは辛いかもしれないけど、それまで黙って見守ってるのが正解だろう。


そして、また何かが起こった時には、今度こそ、あいつの力になりたい。

いつもそばにいて、信頼してもらえる存在でいたい。

そのためには、もっとしっかりしなくちゃね。

家事も育児も頑張って、堂々としたシングルマザーにならないと。


あいつと出会ってから、私と翼の生活は変わった。

いろんな人と知り合って、たくさん前向きな気持ちを受け取って。

只々、一生懸命だった毎日を、明るく楽しく過ごせるようになった。

頼れる人がいる幸せに、初めて気付いた。


だからって、恩返しのつもりはない。

正直を言えば、私の心の中にあいつがどんどん入って来るから、止められなくなっちゃっただけだ。


翼と二人で生きて行くって決めてから、ここまで人と深く関わったことはなかった。

一人ぼっちで子育てしている私が、こんなに誰かを心配したり、愛しく思ったりする日が来るなんて、想像すらできなかった。


なのに、こうなっちゃったんだから仕方ない。

ここまで来たら私だって、ほんの少しでいいからあいつの心の中に入りたい。


好きになってほしいとかじゃなく、ただそばにいたいだけ、頼ってほしいだけ。

それ以上は望まないから、このまま一緒に子供たちの成長を見届けて行きたい。

あいつがそばにいてくれたら、それだけで頑張れそうな気がするから。