しょうがねーな、まったく。

だけど、後悔はない。

どんなに大変でも、辛くても、「ママが大好き」って言ってくれる翼と一緒にいられるなら、毎日、幸せだ。


とにかく酷い男だったから、まったく未練は無いし、会いたいとも思わない。

何がそんなに好きだったのかも、もうわからないくらいだし。

あの人が翼の父親であるという事実は消せないけど、二度と関わりを持つつもりもない。


後で聞いた話によると、彼は裕福な奥さんの実家に頭が上がらないダメ男だったらしい。

私と彼が勤めていた職場も、どうやら義父の息のかかった会社のようだし。

そんな男にすがりついて、奥さんの顔色を伺いながら過ごすなんて地獄だ。

お腹が大きくなるにつれ、彼への思いが自然と薄れて行ったのがありがたいと思うくらい。


最も、今の私にとって、そんなことはどうでも良い。

過去を変えることはできないけど、もう気にする必要の無いことだから。


そう言えば、さっき、あいつも同じことを言っていた。

そうか、そういうことか。

顔色一つ変えずにサラっと言う当たり、あいつもきっと私と同じような気持ちで子育てしてるんだろう。


好きでひとり親やってる人なんて、そうはいないもんね。

片親で育てる覚悟を決めた同志、話せばもっと分かり合えたりするのかな。

あいつも言ってくれたことだし、これからは上手く協力して行けたら嬉しいな。

本当はすごく優しい人なんだって、今日はよくわかったし。