「すいません!! 遅くなりました!!」
「あ、翼くんのお母さん。今日はちょっと早いですね。」
「へっ? 」
「決して望ましい時間ではないですけど、いつもよりは。だから、翼くん、まだ安心して外で遊んでますよ。」
「そう、なんですか?」
「いつも通り、希ちゃんのパパと一緒に。」
「希ちゃんのパパ?」
「あら、聞いてないんですか? 希ちゃんをパパがお迎えに来る時は、翼くん、一緒に鉄棒の練習してるんです。逆上がりができるようになりたいんですって。」
「そうなんですか? そんなの初耳です。」
「え? 本当ですか? 最初は鉄棒なんて握ったこともないって言ってたのに、もう前回りは一人でできるようになったんですよ。」
「うそ!?」
「あぁ、じゃあ、逆上がりができるようになってから言いたかったのかな。まだ秘密にしておいた方が良かったかしら。」
「ど、どうなんでしょうね.......。」

 にこやかに担任の由貴子先生からそう言われたものの、突拍子もない話題に、軽くショック受けてるんですけど。

 だって、鉄棒? 逆上がり?おまけに希ちゃんのパパ?息子の口から聞いたことのないワードの連続に、何とも言えない疎外感みたいなものを感じる。