しょうがねーな、まったく。

厳密に言えばちょっと嘘ついてるけど、本当にそれだけではない。

こんなに張り切ってるのは、翼にとっても、私にとっても、世間で言う一般的な運動会はこれが初めてっていうのもある。


前にいた保育所では、運動会って言っても公民館のホールで形だけやってたようなものだったし、人数も少ないせいか、それほど盛り上がる行事ではなかった。

半日もかからないからお弁当もいらないし、クラスも曖昧だから大した演目も無い。

親としては楽だけど、やっぱりどこか物足りない気もしていた。


だから、翼の初めての運動会を楽しい思い出にしてあげたい。

ならば、母としてここは頑張り所だろう。

あいつにも大見栄切っちゃったことだし、これはチャンスでもある。

上手く行けば、少しはあいつに見直してもらえるかもしれない。


「で、何を教えればいいの?」

「う~ん.....。何だろ?」

「もしかして、何がわからないのかわからないとか?」

「うん、そう!!」

「マジ? それ、結構ヤバくない?」

「だから、頼んでるんじゃん。」

「わかった。とりあえず、今度、うち来なよ。」

「いいの?」

「仕事が休みの日、翼連れて遊びにおいで。それまで自主練して、質問考えとくように。」

「はい。ありがとう。よろしくお願いします!!」