若の瞳が桜に染まる

「あの…、遅くなったけど、あの時は我久と一緒に助けてくれてありがとう。
お陰で無事に過ごせてる」

そう言って旬と蘭に頭を下げた。
それに対していち早く眉をひそめたのは蘭だった。

「はぁ?何言ってんの?
そもそもあんたを誘拐したのは私らじゃん」

「誘拐?
あれは私が二人についていったからで…。
知らない人についていっちゃ駄目って我久に怒られた。

とにかく、ありがとう」

「お礼言われると変な感じだな。

日和って呼んだら我久さん怒りそうだから、お嬢って呼ばせてもらうよ。
俺のことは旬兄って呼んで」

ふざけているのか、旬はおかしな提案をした。

「なんだ旬兄って。
旬の趣味か?」

じとっとした目を我久からだけでなく、蘭からも向けられる。
だが全く気にしていない。

「いやー、親しみやすいのが良いかと思っただけですよ。

ほら次、蘭の番だ」

「二葉蘭。
あんたと仲良くするつもりはないけど、顔合わせることも多いだろうから挨拶はしておく。

裏切った日には、私が直々に始末すっから」

若干ピリついた空気となり、我久は気が気でなかった。

「はい!
じゃあ、荷物を運びましょう!」

その掛け声で皆一斉に動き出した。