若の瞳が桜に染まる

「あの、ここって…」

「おやおや、彼氏さんかい?
ここは下宿を営んでいてね。日和の部屋はこの奥じゃよ」

「は、はぁ。お邪魔します」

日和についていって奥の部屋に入ると、段ボール箱が三箱重ねてあるだけで、部屋はすっきりとしていた。

圧倒的に、ベランダに並べられた日和のものであろう植木鉢のほうが多い。

そこには、屋上では見たことのないものも沢山あった。

「やっぱ凄いな。けど、全部運べそうだね。
俺の部屋の前の庭で育てれば誰も文句は言わないだろうし」

「…良いの?」

「もちろん。
何、心配してた?」

「手放さなきゃいけないかなって思ってた」

「そんな。
日和の大事なものを手放せなんて言わないよ」

そこでクラクションの音が響いた。旬と蘭が到着したようだ。