若の瞳が桜に染まる

「な、何言ってるんだよ。タイプとかそういうつもりで言ったんじゃないし、岡本さんだって十分魅力的だよ」

少なくともこのオフィスに一人は、岡本さんの魅力に取り付かれて仕事を疎かにする人間がいると、付け加えたかった。

「そうですか?
でも私って、好きな人には振り向いてもらえない可哀想なタイプなんですよ…」

「そうなの?
それは…困ったね…」

「そういえば正隆に聞きましたよ。
天祢さんも今度の飲み会来てくれるんですよね。その時にじっくり話聞いてください。

それじゃあ、私もそろそろ戻らないと」

「そっか」

一人になった屋上で、ようやく焦りがおさまってきた。もうほとんど散ってしまった桜の木に手を添えて、思ったことを呟いた。

「俺、…隠し通せるかな」

見えない未来におけるただならぬ不安。
いつか日和とのことがバレて、人々が去っていく。そんな不安な未来ばかりを想像してしまっていた。