「違う。そうじゃなくて…。
いや、俺としては喜んで書くっていうか…」

だからと言って、結婚の不安について語るというのも気が引けた。

「何をごちゃごちゃ言っている。
さっさと書け!」

…本当に書いてるよ。
まぁ、爺さんに命を脅かす発言をされたんだし、安全を確保したい気持ちもわかるが……。

そう、我久の方が狼狽えていた。

日和はサラサラと惑うことなく婚姻届に自分の名前を記入した。
日和が署名した以上、我久が放り出す訳にはいかなかった。

こうして並んだ二人の名前。

「じゃあ、嬢ちゃんには今日からこの部屋に住んでもらう。
以上だ」

辰久が出ていき部屋に残った二人。