若の瞳が桜に染まる

「待てよ!
俺は日和に何も話してない。それどころか聞かれてもいない」

「親密になってお前の警戒を解いて、情報を聞き出す。そういう算段だったんだろ!?」

語尾の迫力が強くなり、言葉だけで相手を圧倒する。
日和は全く顔をあげられない。

「何で決めつけてるんだよ!
日和だって、…俺が天祢組の人間だって知らなかったはずだ」

日和は俯いたままで、こくりと小さく頷いた。

「私…。

…父が警視総監だっていうのは知ってたけど、私、隠し子だから一度も会ったことない。

スパイとかそんな話、全然わからない……」

我久には、日和が嘘を言っているようには見えなかった。

日和はただ植物が好きな女性だ。花を育てるのに一生懸命で、口下手な俺がしつこく屋上に通いつめても嫌な顔一つせずに迎えてくれる。

我久は、今までの日和との日々を思い返していた。